はじめに

 夜明け前です。川の水の面も暗くひっそりとしています。この暗さの中で、ヤコブは自分の妻、側女、子供、牛・羊など向こう岸に渡して、今、一人になっています。ヤコブはずっと前に、何も持たずに父イサクのもとを発ちましたが、その間、時間が随分経つ内、財産もいろいろ増えました。妻や子供達もたくさん持つようになりました。ところが今、再び一人になったのです。自分の持ち物を全て向こう岸に渡し、暗闇の中で一人になっています。