サウル王の三つの側面

 ダビデヨナタンの友情と全く(全くといって良いと思いますが)逆の人間性をあらわにしたのが、王であるサウルでありました。同じ3つの側面からサウルという王様の姿を概観したいと思います。


 一つ目に挙げられるサウル王の姿は、識見(判断)を見失うことがあったということです。アマレクという民族とサウル王が戦う場面がありますが、その時に神様から託されていた命令、それは敵の全てを焼き尽くせという命令でありました。サウル王はこの神様の命令を軽く考えたのでしょうか。自分の部下の兵隊達が戦利品をあさって取り分けることを容認したのです。預言者であるサムエルは、後にサウル王に対して「あなたは主の言葉を退けた」と告げました。サウル王が戦利品を略奪することを容認するということは、他でもない「主の言葉を退けた」ということでありました。しかしそのことを預言者のサムエルから告げられても、サウル王は自分が「主の言葉を退けた」という自覚を持っていなかった。それが実に悲劇だったと思いますが、彼自身が自分のやったことに気がつかなかった。全くこの識見(物事に対する正しい判断、考え)をもっていなかった。自分のことしか考えなかったのであります。