はじめに

 イエス・キリストの名前によって宣教していた使徒の一人、ステファノは、ユダヤ人のねたみと偽証によって捕えられ、議会に引き出されました。大祭司から訴えられた内容について弁明の機会を与えられた時、ステファノが初めに語ったことは、訴えられている罪状(律法や神殿)についてではなく、民族の父祖であり信仰の父と呼ばれるアブラハムの生涯でした。ユダヤ人にとって歴史がアブラハムから始まるのは、ごく自然のことです。(日本人にとっての民族の祖先であり父と呼ばれる人物は思い当たらず、初めて日本史に登場する固有名詞は邪馬台国の女王卑弥呼で、AD3世紀の話です。イスラエルの歴史はBC2000年のアブラハムから民族に語り伝えられ、モーセの時代はBC1300年頃、ダビデの時代はBC1000年頃です)。