はじめに

 ローマがユダヤ地方の総督として派遣していたフェリクスのもとで、パウロの裁判は開かれました。しかし告訴したユダヤ人の側では、パウロを有罪にする証拠も証明も出来ませんでした。この裁判の前に総督フェリクスは、千人隊長リシアから「パウロユダヤ人との間にある問題を調べた結果、それはユダヤ人の律法に関する問題であって、死刑や投獄に相当する理由はなかった」との報告を受けていました。さらに彼自身、キリスト教のことをかなり詳しく知っていました(24:22)。


 フェリクスの、総督という地位や権力から考え、この状況であれば今、目の前にいるパウロを無罪放免することは可能でした。が、彼はそうしませんでした。彼は、エルサレムにいる千人隊長がカイサリアにやって来た時に判決を下すと言って、裁判の判決を延期したのです。