はじめに

 カイサリアで、新総督フェストゥスのもと、パウロの裁判が再び始まりました。告発人であるエルサレムの宗教指導者達は、パウロを有罪にして死刑に持ち込もうとしましたが、結局、罪状は立証できませんでした。総督は、告訴の内容が宗教上のことであり、死罪にはあたらないと知っていましたが、ユダヤ人に気に入られようとして、ユダヤ人が願っているように「この裁判を再びエルサレムに行って続けたいか」とパウロに持ちかけました。パウロはこれ以上公平な裁判を期待できないことから、ローマの法廷で決着をつけるべく皇帝に上告しました。死罪に匹敵する罪を犯したなら、死を免れようとは思わないと断言し、自分の命を惜しんでの上告ではないことをここで明らかにしています。


 一方でパウロは、ローマ伝道への思いをずっと抱いており、夢の中でも「エルサレムで力強く証ししたように、ローマでも証しをしなければならない」という主の言葉を聞いていたので(23:11)、たとえ「囚人」という形であれ、ローマ行きは神様の御心であると確信を与えられたのでしょう。この裁判で上告は受理され、パウロのローマへの護送が決定しました。