はじめに

 今日の聖書は、イエス様がなさった奇跡の中でも「ベトザタの池の奇跡」(口語訳「ベテスダの池」)として良く知られています。この出来事ではイエス様と、38年間病気で苦しみ、歩くことの出来ない人、そして、熱心なユダヤ教徒達が登場します。

 初めに38年間という時間を考えてみます。例えば私の場合、満州に生れて、日本に引き揚げてきて、子供時代を経て高校を卒業し会社に勤め、神学校に行き、大学紛争をはさんで7年後に卒業して学校の先生になり、結婚し、三人の子供が与えられ育てていた年月です。それは大変長い長い時間です。この長い時間を、この人は、病気という状態で、エルサレム神殿の「羊の門」とよばれる門の近くの池を囲む回廊で、他の同じような体の不自由な人々と一緒に過ごしていました。何歳からかわかりませんが、毎日神殿に来る大勢の人達を見ながら、神様はなぜこのような不公平をお許しになるのかとうらめしく思い、自分の人生に絶望したこともあったかもしれません。しかし長い間、同じ状況が続く内に、あきらめに似た気持を抱くようになっていたかもしれません。私達の想像をはるかに超えた人生です。

ある日イエス様は祭りの為エルサレムに来られ、回廊に横たわる大勢の病人や、目の見えない人、足の不自由な人、体のマヒした人達の中から、この、38年間病気で苦しんでいた人に目をとめられました。