良心の問題点

 ただし良心は一つのことだけ知っているわけではありません。善と悪についても、さまざまなことを知っている。その良心が属する集団、社会、国によって必ずしも同じとはいえないかもしれません。にもかかわらず、「良心」は誰でもが生まれながらにして持っている善悪の基準であるといえます。特に欧米では、良心には「共に知っている善悪の基準」の意味があります。(良心conscience …… con-「共に」/science-- scire 「知る」)。「共通の善悪の基準」でありながら、しかし実際にいつ良心の基準が働くかというと、はなはだ始末が悪い。悪いことをした時、自分で気づき、あるいは他人からこっぴどく指摘され、あるいは、多くの人々の前(例:マスコミなど)で明らかにされ、その時始めて良心のうずきを感じることがあります。良心の役割は大変重要であると共に、ある意味では始末が悪い。パウロは自分の心の中で、ある基準に従えばそれでも良いし、又、別の基準に従えば悪く、自分の心の中に良心どうしが訴えたり弁明したりする、と言っています。