ヘロデと住民の利害関係

 昔からフェニキア人が食料を規則的にパレスチナから輸入していたことが知られていますが、ここではおそらく経済問題のトラブルが両者の間にあったようです。そこで、困ったフェニキアの商人達が王の侍従を味方に引き入れ、王に和解を願い出たことで調停がうまくいったという背景があるようです。調印式が華々しく行われたその日、ヘロデ王は立派な王の式服を身につけ、王座から、王としての演説を行いました。自分の寛大さ、偉大さを印象づけようとする権力者の姿です。それに対してフェニキアの住民達は、演説するヘロデ王に「神の声だ、人間の声ではない」と叫び続けました。王から利益を受けることになった住民達は、王に対して「神」という言葉を与えてご機嫌をとったといえるでしょう。