ギレアドの人、勇者エフタ

 今日聖書に出てくるギレアドのエフタは「勇者であった」(11:1)と書かれています。しかし彼は両親の正式な結婚生活の中で生まれた人ではなく、母は遊女でした。当時においては罪人のように無視された女の人から生まれた、そのような背景を持っている人でした。エフタが大きくなると、正妻の子供達から「あなたはよその女の産んだ子だから、私達の父の家にはあなたが受け継ぐものはない」と言って追い出されました。今を生きる私達の世界にも有り得るような話です。エフタには何の罪もなく、ただ出身が悪いというだけで故郷を離れて住まなければならなくなりました。当時、家族や親戚がいる安全な所から離れて一人で暮らすということは、様々な危険を伴う生活でした。家から追い出されたエフタは兄弟達を避けてトブというところで暮らしていましたが、自分のそのような立場を悲観して絶望にくれるのではなく、たくましく生きる道を模索したような気がします。「そのエフタのもとにはならず者が集まり、彼と行動を共にするようになった。」(3節)。それを見るとエフタは力強い勇士でありましたが、賢く、ある面、心が痛んでいる人や世の中で落ちこぼれになった人達をしっかり引き寄せる人柄を持っていたのではないかと思われます。悲しみと痛みを覚えている人々、捨てられた者達が、エフタのもとに集まって来たのです。