「あの人達がいなければ、あなたたちは助からない」

 真夜中に、船員が水の深さを測ると36mあり、更に進んで測ると27mと浅くなっていました。明らかに陸に近づいている兆候です。そこで、船が暗礁に乗り上げるのを防ぐ為に、船の後ろにいかりを降ろしたのですが、船員達はそれに乗じて自分達だけ逃げようと小舟を海に降ろしました。真夜中にもかかわらず、パウロは船員達の仕事を見守っていたのでしょうか。すぐにこのことを隊長と兵士に知らせました。今、船員がいなくなれば、残された人達は助かる見込みはありません。知らせを受けた兵士達は、船員が逃げていかないよう、小舟の綱を断ち切り、小舟を流してしまいました。そしてひたすら夜が明けるのを待ちました。