今回の震災と罪悪の因果関係

文明生活を享受している現代人が、繁栄の中で享楽的になったり、退廃的になったりしてモラルが低下しているのは事実であるでしょう。そしてそのことを反省するのも大事かもしれません。しかしそのことと、大震災が起こったという事実の中に、本当に因果関係があるのでしょうか。確かに聖書には、創世記のソドムとゴモラの話のように、自然災害と罪悪との関係を見ることは出来ます(創世記18:20、19:24参照)。しかし、今回起きた大災害とあてはめて結論を出すのは、きわめて危険なことのように思われます。なぜかというと、震災で命を奪われた人達が、震災を生き延びた私達よりも物欲的で不道徳な生活を送っていたかというと、そういうことは全く言えません。特に今回は、関東大震災と違い、日本の繁栄のおごりの中心であった首都圏ではなくて、むしろ過疎化、高齢化が進んでいた東北地方を襲ったわけであり、特に津波で多くの被害を受けた三陸地方では、漁民が海で魚を取って暮らす場所であり、華美や奢侈やおごりからは縁が遠かったということを考えると、災害と人間の罪悪や物欲と結び付ける因果関係はなかったと結論せざるを得ません。